瀬古の家

国道沿いの街中にある32坪程の小さな敷地での計画でした。この土地での家づくりを決めた時、果たして、ここで理想の暮らしができるのか施主のNさんは少々不安だったと思います。それでも、もともと生活圏だったこの場所で住み続けることはNさんにとって大切なことの様に感じました。Nさんからの主な要望は「老後は1階だけで暮らせるようにしたい」、「明るくて開放的な空間が欲しい」の二つでした。この小さな敷地では庭のような外部空間をつくるのは難しく、1階でのびのびと暮すのはあまり現実的ではないように感じ、この相反する条件をどう解くのかがキモになりました。
まずは、南の隣地が路地状敷地であったことから、自分の敷地に取り込むことを考えてみました。1階は天井高4mとスケールアウトさせた気積の大きいワンルームをつくり、隣地の上空を空閑地として捉え、大きく開口部を設け周辺環境を取り込むことで、プライバシーを確保しながらも外の空気を大いに感じられるような場を考えました。また、玄関は常時開いておけるような設とし、玄関先の小さな庭が街との心地よい距離感を生み出してくれています。
次に、プランと同様に構造体もシンプルに計画しています。耐力壁は外壁だけに配置し、内部の壁は全て間仕切壁としているので、極端な言い方をすれば全て撤去すると倉庫の様ながらんどうな空間になります。間仕切壁は最小限とし、室内の繋がりや街との繋がりを極力隔てないように配慮しました。街との境界が曖昧になった大きな箱に暮らしているような感覚が心地よい開放感をつくりだしています。
「瀬古の家」は住まい手のNさんの大らかさがプランや住まい方にうまく反映されて、面積としては小さいながらも、生活と街の風景が混ざり合っていくような大きな住まいを手に入れることができました。


 
  

 

 

 
  

 

 

 

 

 

 
  

 

 
  

 

所在地 |愛知県名古屋市
主要用途|専用住宅
工事種別|新築
構造規模|木造2階建
家族構成|40代夫婦+子供1人
敷地面積|108.20 ㎡
建築面積|  51.70 ㎡
延床面積|103.40 ㎡

構造|ワークショップ
施工|アイタック
造園|design LOOP
写真|山内亮二